10月は僕にとってとても大きなコンサートであった、鈴木優人指揮、横浜シンフォニエッタとのシュトラウスの2番の協奏曲がありました。
今回のPassageでは、プログラムに書いた曲への思い入れをお読みいただきたいと思います。

リヒャルト・シュトラウスには、ホルンの為に二つの協奏曲を書き残してくれたが、この二曲は60年の歳月が隔たっていることもあってか、対照的だ。僕自身、ホルンを学んでいた時期は、18歳の時に書かれた若々しい「第一番」の方を好んで演奏していたが、皆さんの良く知るシュトラウス像とはとはだいぶ違った曲であることも確かだ。もっと若書きの曲はいわゆるシュトラウス節が出ているのに、「第一番」が保守的な音楽運びなのは、名ホルン奏者であり、そして当時革新的な作曲をしていたワーグナーを毛嫌いしていた父、フランツ・シュトラウスに献呈したところが大きいのではないだろうか。もっとも、息子リヒャルトはその後自分独自の世界を切り開いてゆくのだが。
ホルン奏者という視点からリヒャルト・シュトラウスを見ると、彼のホルン愛は常軌を逸しているといっても過言ではないだろう。オペラや歌曲ではいくつもの重要なソロを取り、交響詩や交響曲に至っては主人公(「ティル・オイレンシュピーゲル」や、「家庭交響曲」におけるリヒャルト自身、「英雄の生涯」では英雄)を表すのは軒並みホルンである。アルプス交響曲に至っては、使用するホルン奏者の人数は実に20人に及ぶ!
そんな彼の生誕150周年に、ホルン奏者として愛に応えたいと思い、本日の指揮者である鈴木優人君に作曲をお願いした。リヒャルト・シュトラウスへのオマージュがたっぷり含まれた、ホルンとピアノのための断片的小交響詩「世界ノ雛型」という曲だ。詳しくは別の機会に譲るが、五月の初演から数えてもう四回再演している。本当に面白く、内容のある曲が出来上がったと、委嘱者として非常に嬉しい思いである。
さて、そんな気心の知れた優人君との「第二番」。もう晩年ではあるが、父フランツの面影を感じさせるような(そして「第一番」の冒頭を彷彿させるような)単純な変ホ長調で始まるが、すぐに後期のロマンチックで流れるような音楽が表れる。最初のわずか10小節で、この協奏曲全体の重要な動機が全て表現されているのは、彼が得意としたオペラの、序曲の様でもある。多くの協奏曲が「独奏者」と「その他伴奏オーケストラ」に二分化されることが多いが、この第二番はそこかしこに室内楽的協奏が見て取れる。オーケストラの管楽器の名人芸がきらびやかに聴こえる一楽章の後、独奏ホルンが二楽章ではオーケストラに埋没するように書かれている場面もあり、三楽章ではオーケストラの2本のホルンと同時に独奏ホルンがファンファーレを演奏する箇所もある。鈴木優人君と横浜シンフォニエッタの皆さんと、本当の意味での「協奏」曲を、ある時は手を取り合い、またある時は火花を散らすように演奏したい。


2014年9月 福川伸陽
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